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【最新情報:2013年12月7日】



 安全保障にかかわる機密情報を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法は、6日夜の参院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決、成立した。


 投票結果は賛成130票、反対82票だった。みんなの党と日本維新の会は採決を退席した。民主党は採決に反発し、安倍内閣の不信任決議案を衆院に、同法を担当する森消費者相の問責決議案を参院にそれぞれ提出したが、いずれも否決された。同法は今月中に公布され、公布から1年以内に施行される。


 特定秘密保護法は、防衛や外交など4分野の機密情報のうち、特に漏えい防止が必要なものを閣僚らが「特定秘密」に指定する。これを外部に漏えいした公務員らの罰則を最長懲役10年とし、現在の国家公務員法などの罰則より重くする。

(読売新聞 2013年12月07日01時42分)


【2013年11月26日】



 安全保障の機密情報を漏えいした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案は26日夜、衆院本会議で採決が行われ、自民、公明両党の与党とみんなの党などの賛成多数で可決、参院に送付された。


 臨時国会は12月6日の会期末が近づいているが、政府・与党は参院でもただちに法案を審議入りさせ、今国会で成立させたい考えだ。

 26日の衆院国家安全保障特別委員会の採決後に行われた衆院本会議は、民主党など野党が、委員会採決同様、この日の採決に反対したため、開会が大幅に遅れて夜にずれ込んだ。

 討論に続く本会議で行われた、与党と日本維新の会、みんなの党が合意した修正案に対する採決では、野党のうち、民主、共産、生活、社民の各党が反対した。与党と法案の修正で合意していた維新の会も26日の採決には反対し、途中退席した。また、自民、みんなの両党の一部で反対、退席する造反が出た。
(読売新聞 読売新聞 2013年11月26日22時11分)


    


「特定秘密保護法案」とは?

 特定秘密保護法案(特定秘密の保護に関する法律案)とは、国にとって特に重要な情報(機密情報)を「特別秘密」に指定し、その特別秘密を取り扱う人(国家公務員等)を調査・管理し、特別秘密を外部に知らせたり、外部から特別秘密を知ろうとしたりする人をなどを処罰するための法律です。

 しかし、この特定秘密保護法案に関して、日本弁護士連合会、日本ペンクラブ等が反対を表明し、国民の間でも反対の声が上がっています。


 この特定秘密保護法案、どこに問題があるのでしょうか。


【2013年11月7日】





    



    


特定秘密の保護に関する法律案の概要


第1 趣旨

 我が国の安全保障に関する事項のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該事項の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって国及び国民の安全の確保に資する。


第2 概要

1 特定秘密の管理に関する措置
(1) 行政機関における特定秘密の指定等


ア 行政機関(※)の長は、別表に該当する事項(公になっていないものに限る。)であって、その漏えいが我が国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものを特定秘密として指定するものとする。

※ 行政機関の範囲及び単位を情報公開法、行政機関個人情報保護法及び公文
書管理法と同様に定義。

イ 行政機関の長は、指定の際には有効期間(上限5年で更新可能)を定めるものとする。有効期間満了前においても、アの要件を欠くに至ったときは速やかに指定を解除するものとする。

ウ 行政機関の長は、指定の際には、政令で定めるところにより、当該行政機関において当該特定秘密の取扱いの業務を行わせる職員の範囲を定めるものとする。

エ 特定秘密の取扱いの業務を行うことができる者は、(3)の適性評価により特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた行政機関の職員若しくは契約業者の役職員又は都道府県警察の職員(3(2)において「取扱業務適性職員等」という。)に限るものとする。

 ただし、行政機関の長、国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官その他職務の特性等を勘案して政令で定める者については、(3)の適性評価を要しないも
のとする。

オ 行政機関の長は、指定をしたときは、指定に係る事項が記載された文書に特定秘密の表示をすることその他の当該事項が特定秘密である旨を明らかにし、及びこれを保護するために必要なものとして政令で定める措置を講ずるものとする。

(2) 特定秘密の提供

ア 行政機関の長は、安全保障上の必要により他の行政機関に特定秘密を提供するときは、当該特定秘密の取扱いの業務を行わせる職員の範囲その他当該他の行政機関による特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める事項について、当該他の行政機関の長と協議するものとする。この場合において、当該他の行政機関の長は、(1)ウ及びオの措置を講ずるほか、当該協議の結果に従い、その職員に特定秘密の取扱いの業務を行わせるものとする。

イ 警察庁長官は、安全保障上の必要により都道府県警察に特定秘密を提供するときは、当該特定秘密の取扱いの業務を行わせる職員の範囲その他当該都道府県警察による特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める事項について、当該都道府県警察に指示するものとする。この場合において、当該都道府県警察の警視総監又は道府県警察本部長(以下「警察本部長」と総称する。)は、(1)ウ及びオの措置を講ずるほか、当該指示に従い、その職員に特定秘密の取扱いの業務を行わせるものとする。

ウ 行政機関の長は、安全保障上の特段の必要により契約業者に特定秘密を提供するときは、当該特定秘密の取扱いの業務を行わせる役職員の範囲その他当該契約業者による特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める事項について、当該契約業者との契約に定めるものとする。この場合において、当該契約業者は、当該契約に従い、その役職員に特定秘密の取扱いの業務を行わせるものとする。

エ アからウまでによる場合のほか、行政機関の長は、特定秘密の提供を受ける者が当該特定秘密を各議院若しくは各議院の委員会若しくは参議院の調査会が行う審査若しくは調査で公開されないもの、刑事事件の捜査(刑事訴訟法第316条の27第1項の規定により提示する場合のほか、捜査機関以外の者に当該特定秘密を提供することがないと認められるものに限る。)その他公益上特に必要があると認められる業務若しくは手続において使用する場合であって、当該特定秘密を使用し、若しくは知る者の範囲を制限すること、当該業務若しくは手続以外に当該特
定秘密が使用されないようにすることその他当該特定秘密を使用し、若しくは知る者がこれを保護するために必要なものとして政令で定める措置を講じ、かつ、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたとき又は民事訴訟法第223条第6項若しくは情報公開・個人情報保護審査会設置法第9条第1項の規定により提示する場合に限り、特定秘密を提供することができるものとする。

(3) 適性評価の実施

ア 適性評価は、特定秘密の取扱いの業務を行うことが見込まれる行政機関の職員若しくは契約業者の役職員又は都道府県警察の職員(以下「行政機関職員等」という。)の同意を得て、次に掲げる事項について、当該行政機関職員等が特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがあるかどうかという観点から、行政機関の長又は警察本部長が行うものとする。

@ 外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全への脅威となる諜報その他の活動並びにテロ活動(政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する行為を行う活動をいう。以下同じ。)との関係に関する事項(当該行政機関職員等の家族及び同居人の氏名、生年月日、国籍及び住所を含む。)

A 犯罪及び懲戒の経歴に関する事項

B 情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項

C 薬物の濫用及び影響に関する事項

D 精神疾患に関する事項

E 飲酒についての節度に関する事項

F 信用状態その他の経済的な状況に関する事項

イ 行政機関の長又は警察本部長は、調査を実施するため必要な範囲内において、当該行政機関職員等若しくはその関係者に質問し、当該行政機関職員等に資料の提出を求め、又は公務所若しくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができるものとする。

ウ 行政機関の長又は警察本部長は、適性評価を実施したときは、特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認めるかどうかの結果を当該行政機関職員等に対し通知するものとする。

エ 行政機関の長又は警察本部長は、適性評価に関する苦情に適切に対応するものとする。

オ @適性評価の実施について同意をしなかったこと、A特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認めるかどうかの結果及びB適性評価の実施に当たって取得する個人情報については、国家公務員法上の懲戒の事由等に該当する疑いがある場合を除き、目的外での利用及び提供を禁止する。

2 特定秘密の漏えい等に対する罰則
(1) 次に掲げる者による故意又は過失による漏えいを処罰する。

ア 特定秘密を取り扱うことを業務とする者(自由刑の上限は懲役10年)

イ 1(2)エにより特定秘密を知得した者(自由刑の上限は懲役5年)

(2) 人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為、財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為その他の特定秘密の保有者の管理を害する行為による特定秘密の取得行為を処罰する(自由刑の上限は懲役10年)。

(3) (1)(故意に限る。)又は(2)の行為の未遂、共謀、教唆又は煽動を処罰する。


3 その他
(1) 拡張解釈の禁止に関する規


 本法の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない旨を定める。

(2) 施行期日に関する規定

 公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日とする。ただし、特定秘密の取扱いの業務を行うことができる者を取扱業務適性職員等に限定する旨の規定は、公布の日から2年を超えない範囲内において政令で定める日とする。

(3) 自衛隊法の一部改正及びそれに伴う経過措置に関する規定

 自衛隊法の防衛秘密に関する規定を削除するとともに、本法の施行日の前日において防衛秘密として指定されている事項を施行日に防衛大臣が特定秘密として指定した事項とみなす等の経過措置を定める。


別表

【第1号(防衛に関する事項)】(自衛隊法別表第4に相当)


イ 自衛隊の運用又はこれに関する見積り若しくは計画若しくは研究

ロ 防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報

ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力

ニ 防衛力の整備に関する見積り若しくは計画又は研究

ホ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物(船舶を含む。チ及びリにおいて同じ。)の種類又は数量

ヘ 防衛の用に供する通信網の構成又は通信の方法
ト 防衛の用に供する暗号
チ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの仕様、性能又は使用方法

リ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの製作、検査、修理又は試験の方法

ヌ 防衛の用に供する施設の設計、性能又は内部の用途(ヘに掲げるものを除く。)


【第2号(外交に関する事項)】

イ 安全保障に関する外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容

ロ 安全保障のために我が国が実施する貨物の輸出若しくは輸入の禁止その他の措置又はその方針(第1号イ若しくはニ、第3号イ又は第4号イに掲げるものを除く。)

ハ 安全保障に関し収集した条約その他の国際約束に基づき保護することが必要な情報その他の重要な情報(第1号ロ、第3号ロ又は第4号ロに掲げるものを除く。)

ニ ハに掲げる情報の収集整理又はその能力

ホ 外務省本省と在外公館との間の通信その他の外交の用に供する暗号


【第3号(外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関する事項)】

イ外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全への脅威となる諜報その他の活動による被害の発生・拡大の防止(以下「外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究

ロ外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関し収集した国際機関又は外国の行政機関からの情報その他の重要な情報

ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力
ニ 外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止の用に供する暗号


【第4号(テロ活動防止に関する事項)】

イ テロ活動による被害の発生・拡大の防止(以下「テロ活動防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究

ロ テロ活動防止に関し収集した国際機関又は外国の行政機関からの情報その他の重要な情報

ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力
ニ テロ活動防止の用に供する暗号






    



 


(東京新聞より)




    


日本弁護士連合会

「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見書

                              2013年(平成25年)9月

内閣官房内閣情報調査室御中


第1 意見の趣旨

 日本国憲法の基本原理を尊重する立場から,「特定秘密の保護に関する法律案」(以下「本件法案」という)に強く反対する。



第2 意見の理由

1 立法事実がないこと

 国民主権原理や国民の憲法上の権利などに重大な影響を与えるおそれのある法案の立法化が是認されるためには,当該法案を必要とする具体的事情(立法事実)の存在が必要不可欠である。

 ところが,2011年1月4日に政府が設置した秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議(以下、「有識者会議」という)において紹介された過去の情報漏えい事案をみると、実刑に処せられたのは懲役10月に処せられたボガチョンコフ事件1件だけであり、同事件も他の漏えい事件も,日本弁護士会秘密保全法制対策本部の事案分析によれば、十分な原因分析と必要以上とも言える対策が採られており,漏えい事件の再発を防いでいる。

 従って,秘密漏えいを防止するために新たな立法を必要とする立法事実は存在しないから,本件法案を立法化すべきでない。

2 「特定秘密」に指定できる情報の範囲が広範過ぎる

 本件法案では,秘密指定の対象となる「特定秘密」の範囲を,@防衛,A外交,B外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止、Cテロ活動防止の4分野とし,別表で項目を挙げている。

 しかし、これによって秘密指定できる情報の範囲は広範かつ不明確に過ぎる。

第1号(防衛に関する事項)は,自衛隊法別表第4と同じであり,何ら限定していない。

第2号(外交に関する事項)は,「安全保障」の範囲が無限定に広がるおそれがある。

第3号(外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関する事項)は,「外国の利益を図る目的」「我が国及び国民の安全への脅威」「その他の重要な情報」など抽象的で曖昧な文言になっており,範囲が極めて不明確である。

第4号(テロ活動防止に関する事項)は,政府がどのような「テロ活動」を想定するかについて歯止めがないし,政府のある活動がその防止のためのものかどうかも政府の主観的な判断次第であるから,いくらでも範囲が拡大してしまう可能性がある。

 これらに,「我が国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要」との限定要件を付するとしても,その文言自体が抽象的である上に,行政機関が自ら判断することになっているので,厳格に運用される保障はない。

3 人的管理はプライバシー侵害である

 人的管理は,情報を管理する人の側に注目して,人の監視を強化することによって情報漏えいを防ごうとするものである。

 確かに過去の漏えい事件を振り返ると,漏えい者について何らかの特異事情が見受けられないではない。

 しかし,現実問題としては,様々なリスク要因があっても情報漏えいしない者がいる一方で,リスク要因がほとんどなかった者が情報漏えいすることが起こることがある。したがって,リスク情報を集積することにより漏えい事件を未然に防ぐことはかなり難しい。

 他方,スパイ活動・テロ活動関係や犯罪・懲役の経歴,情報取扱者としての非違,薬物濫用・影響,精神疾患,信用情報など,他人に知られたくない個人情報が相当含まれており,プライバシー侵害のおそれがある。

 本件法案は,行政機関職員等の同意を得た上で,第三者に対する照会等により調査を行うこととしているが,行政機関職員等が上司等から同意を求められた場合に,真に自由な意思に基づいて同意・不同意の判断を行うことは組織の性質から考えて不可能である。

4 罰則が過剰である

 本件法案では,故意による情報漏えいだけでなく,過失による情報漏えいも処罰するとしているが,過失犯を処罰対象とすることは,責任主義の原則からして極めて問題である。

 既遂の場合だけでなく,未遂の場合,共謀の場合,独立教唆の場合,煽動の場合も処罰対象としており,処罰できる行為の範囲が著しく広い。

 また、本件法案では,国会議員、裁判官、情報公開・個人情報保護審査会委員などが故意又は過失により秘密情報を漏えいした場合には懲役5年以下の刑罰を課することにしている。裁判官及び審査会委員は国家公務員法の守秘義務で十分に足りており,このような処罰規定を設ける必要はない。

 国会議員については国会議員間の自由な討論や政策秘書に調査させることを罰則付で禁止することになり,議会制民主主義が空洞化するおそれがある。
 
 秘密情報を取得する行為態様が,「人を欺き」「人に暴行を加え」「人を脅迫する行為」「財物の窃取」「施設への侵入」「不正アクセス行為」「特定秘密の保有者の管理を害する行為」である場合,行為者は処罰されることになる。

 しかし,これらの行為概念はいずれも不明確である。特に「その他の特定秘密の保有者の管理を害する行為」は,それ自体が犯罪でないことを想定しているようであるから,そうだとすれば,処罰範囲は不明確である上に,過剰と言わざるを得ない。

5 結論

よって,日本国憲法の諸原理を尊重する立場から,本件法案が立法化されることに強く反対し,政府が本件法案を国会に提出しないことを強く求める。






    


日本ペンクラブ

意見書「特定秘密保護法案に反対する」

 現在の日本社会において総合的な秘密保護法制は要らないし、むしろ作るべきではない。これが、日本ペンクラブの結論である。私たちはすでに、2011年11月30日付声明「秘密保全に関する法制の整備についての意見」において、この立場を明確に表明してきた。

 今般、政府によって「特定秘密の保護に関する法律案」が公表され、ごく短期間のパブリックコメント期間を経て、この秋の臨時国会に提出されようとしている。この法律案は、2年前に「秘密保全法案」として提出されようとしたものと内容的にほぼ同一であり、日本ペンクラブはこの法律案に対し、従前からの反対の立場を維持する。

 以下は、その理由であって、同時に今回のパブリックコメントで提示された法制度への意見である。
 
1.「特定秘密」に指定できる情報の範囲が過度に広範である

 法律案は、(1)防衛、(2)外交、(3)外国の利益を図る目的の安全脅威活動の防止、(4)テロ活動防止の4分野に関し、「わが国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要である」情報を「特定秘密」に指定するとしている。

 しかし示された別表を見ても、対象とされる情報の範囲が明確でなく、過度に広範である。例えば原発の安全性に関わる問題は、原発に対するテロ活動防止の観点から「特定秘密」に指定される可能性がある。しかしそうした情報の漏洩(内部告発)や取得(取材活動)が処罰されることになれば、国民は政策選択における必須の重要情報を知る機会を失うこととなりかねない。


2. 市民の知る権利、取材・報道の自由が侵害される

 市民の知る権利が侵害されることは、同時に取材・報道を行う側の取材・報道の自由が侵害されることを意味する。法律案によれば、「特別秘密」を漏えいする行為だけでなく、それを探る行為も、「特定取得行為」として、処罰の対象とされる。一例を挙げれば、特定秘密を扱う取材対象者が、事後的に「記者に欺かれました」と証言しただけで、取材者は訴追リスクにさらされることになる。

 しかも定められる罰則は長期10年の懲役と重い。

 法律案は外務省沖縄密約事件(西山記者事件)を例に、「正当な取材行為は保護される」とするが、何が「正当な取材行為」であるかは裁判所の事後的判断によらざるを得ない。大幅に加重された罰則による威嚇効果のもと、検察(政府)による訴追リスクの増大は、取材者や内部告発者にとって多大な萎縮効果を及ぼし、取材・報道の自由を侵害するものである。


3. 行政情報の情報公開の流れに逆行する

 政府は立法の必要性の理由として、各国での秘密保護法の存在を挙げている。しかし各国での秘密保護法の存在は、行政情報に関する徹底的な情報公開制度の整備が前提となっている。行政情報の情報公開は民主主義の大前提であり、世界的な潮流である。日本では行政情報についての情報公開制度の整備は他国より大幅に立ち後れており、いまだ国民の知る権利の確立が十分ではない。

 そうしたなか、秘密保全法制を推進することは、世界的な行政情報の情報公開の流れに逆行するものである。



4.「適正評価制度」はプライバシー侵害である
 さらにこの法律案の問題としては、新しく導入されることになる「適正評価制度」への懸念を挙げざるを得ない。これは、情報を管理する人の側に注目して、人の監視を強化することによって情報漏洩を防ごうとするものである。調査項目は、住所や生年月日だけでなく、外国への渡航歴や、ローンなどの返済状況、精神疾患などでの通院歴等々多岐にわたり、またその対象も公務員や業務受託を受けた民間人本人に留まらず、その家族や友人、恋人にも及ぶ可能性がある。

 このような「適正評価制度」はプライバシー侵害の領域に踏み込むものであって、容認できない。


5. このような法律を新たに作る理由(立法事実)がない

 職務に応じすべての公務員には、国家公務員法ほか、情報の漏洩を防ぐための法制度が完備されており、今日に至るまで制度不備が具体的に指摘された事実はない。あえて屋上屋を重ねる法律を作ることの必要性が見い出せないばかりか、不必要な法律はえてして悪用されるものである。

 そもそも、国民主権原理や憲法上の人権に重大な影響を与えるおそれのある立法が是認されるためには、そのような立法を必要とする具体的な事情、すなわち立法事実の存在が必要不可欠である。

 しかし、政府が立法事実として挙げる尖閣ビデオ事件については、非公知性や実質秘性について疑義が出され、真に守るべき秘密であるかどうか議論がある。警視庁公安情報流出事件は、漏洩元と見られる警視庁・警察庁がいまだに内部からの漏洩の事実を認めておらず、被害者への謝罪も行われていない。にもかかわらずこれを秘密保全法制の立法事実として挙げるのは二枚舌である。

 その他にも、過去10年程度の漏洩事例を見る限り、現行の公務員法等で規定する守秘義務で十分にカバーしうるものであって、新規に法律を必要とする理由付けはきわめて希薄であって説得力に欠ける。

 この法律案の検討の過程自体が非公開とされており、どのような必要性を前提に、どのような議論がなされ、このような重要な立法がなされようとしているのか、国民の側に知る手段が示されていない。そのこと自体が、この法律案の意図する将来社会の不健全な体質を物語っていると感じざるを得ない。
                                           以上

2013年9月17日

一般社団法人日本ペンクラブ







 このように、日本弁護士連合会、日本ペンクラブを始め、国民からも「特定秘密保護法案」に関する懸念が出されているなか、少しだけ動きがありました。

 2013年9月18日、安倍政権は、10月召集予定のの臨時国会に提出する「特定秘密保護法案」について、「知る権利」と「報道の自由」を明記する調整に入ったとのことです。

 

 政府与党内や法曹界、メディアなどから言論統制への懸念が根強いことに配慮し、この法案の拡大解釈による人権侵害を禁じる条文を書き加える方向とのことです。



  「知る権利や報道の自由などの国民の基本的人権を不当に侵害してはならない」



今後、与党内の議論や内閣法制局の審査を経て条文を固めたうえで法案を閣議決定するとのことのようですが・・・


 果たして、この条文を追加することで、実際の法運用において、国民の知る権利や報道の自由が担保されるのかどうか、甚だ疑問が残ります。




    


【関連サイト】

「秘密保護法」対象の罪と罰
日本ペンクラブ
日本弁護士連合会
秘密保全法に反対する愛知の会
藤原紀香さんが秘密保護法案に懸念 「あいまいを許すな」と賛同の声も
秘密保護法 危険な法案は断念せよ
「第3次アーミテージ・ナイレポート」を通してみる「特定秘密保護法案」〜安倍政権の目論むディストピア〜
NPO法人 情報公開市民センター

(紹介しましたサイトは、記事の掲載期間等でリンクが切れることもあります。ご了承ください。)


【掲示板でご意見を!】


 掲示板を開設していますので、特定秘密保護法案に関するご意見などがございましたら、どうぞ、ご活用ください。

Yon-go Hin-goな掲示板






 現在、政府・与党自民党が、10月召集予定の臨時国会に提出しようとしている「特定秘密保護法案(秘密保全法案)」は、「特定秘密」を極めて広範囲に及びかねず、先に制定された「情報公開法」に逆行するだけではなく、日本国憲法が定めている基本的人権、表現の自由、言論の自由、結社の自由等を脅かすものです。


 市民の立場で、市民目線で情報を発信している市民メディアとして、日本弁護士連合会及び日本ペンクラブの「意見書」に賛同し、特定秘密保護法案に反対します。



                             2013年9月24日
                              市民メディアみやざきCMM
                                主宰 大谷憲史






    




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